デュシェンヌ型筋ジストロフィー・筋強直性ジストロフィー診療実態調査の論文が公開されました
利用頻度の高い情報源として評価された「デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン」
当研究班は、「デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン2014」発刊後4年にあたって神経内科および小児神経科専門医に向けて診療実態のアンケート調査を行いました。
調査結果に基づき、論文「本邦におけるデュシェンヌ型筋ジストロフィーの診療実態~診療ガイドラインによって何が変わったか~」が公開されています。
アンケートは有効回答数1,377通で、「診療ガイドライン」について85.8%が利用頻度の高い情報源と回答しています。
診療ガイドライン発刊後、ステロイド治療やリハビリテーション、脊椎変形の定期評価に取り組む専門医が増えただけでなく、呼吸ケアに非侵襲的人工呼吸管理(NPPV)・拝痰補助装置(MAC)や栄養管理を実施する専門医も増加するなど、エキスパートの推奨を含めた診療ガイドラインが標準的医療普及に効果があったことが確認されました。
この結果を参考に、今後「デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン」の改訂を行う予定です。
本論文は「臨床神経学59 巻、11 号」に掲載されたほか、下記サイトからお読みいただけます。
https://doi.org/10.5692/.cn-001343
筋強直性ジストロフィー診療実態調査では、早期から現れる合併症への関心度が低いことが判明
当研究班では筋強直性ジストロフィーに関しても専門医に向けた診療実態の調査を行い、結果は論文「本邦における筋強直性ジストロフィーの診療実態調査―専門医対象全国調査―」として公開されました。
アンケートは有効回答数1,360通で、診察経験率は神経内科専門医で93.1%、小児神経科専門医で62.2%と高いことがわかりました。
しかし、遺伝学的検査に向けて文書による同意取得が必ずしも行われておらず、合併症に関して本疾患に特有の低酸素血症・無呼吸、日中眠気、疲労感が重要と考える専門医は35%ほどで、ホルター心電図や睡眠時呼吸検査、嚥下機能検査など手間のかかる検査が実施困難ということがうかがえる結果となりました。
この調査結果は、2020年に発刊予定の「筋強直性ジストロフィー診療ガイドライン」に反映されます。
本論文は下記サイトでご覧いただけます。
https://doi.org/10.5692/clinicalneurol.cn-001347
筋強直性ジストロフィー診療ガイドラインに向けた患者実態調査も実施
当研究班では、筋強直性ジストロフィー患者を対象とした国内初となる大規模・網羅的な実態調査も行い、調査結果に基づいた論文「本邦における筋強直性ジストロフィーの患者実態調査―患者対象全国調査―」も公開されました。
調査票は神経・筋疾患患者登録システム「Remudy」の登録者を中心に配布し、342通の有効回答が寄せられました。
9割の患者が疲れやすさを訴えていること、成人患者の1/3が離職、その中でも半分は病気が原因です。人工呼吸療法を勧められても「必要性を実感しないから行わない」という回答が多数であること、女性患者の1/4が不妊治療を経験しており、そのうち8割が筋強直性ジストロフィー診断前であることがわかるなど、患者の実態と課題が明らかになりました。
この結果は、筋強直性ジストロフィー診療ガイドライン作成に活用されています。
本論文は下記サイトからご覧になれます。
https://doi.org/10.5692/clinicalneurol.cn-001349
なお、お寄せいただいた回答のうち、同意確認にチェックがなかった回答は残念ながら解析対象にできませんでしたが、チェックのない回答を含めても本質的な差異はなかったことを申し添えます。
アンケートにご協力いただいたみなさまに感謝いたします。