COVID-19のワクチン接種が始まっています。インフルエンザワクチンなどと比べると、副反応が多いためワクチン接種を迷っている方、筋萎縮が著明で筋肉注射ができないのでは、と心配されている方もおられると思います。
筋ジストロフィー患者さんのワクチン接種のデータはまだほとんどありませんが、筋ジストロフィーだから副反応の頻度が高くなる・強くなるという証拠は無く、これまで国内外から出されている学会・患者会の推奨において、筋ジストロフィーや筋萎縮を理由にワクチン接種を勧めないとするものは有りません。ステロイドなど免疫抑制治療を受けておられる患者さんでは、ワクチンの効果が若干減弱する可能性が否定できませんが、有効性は期待できると考えます。
筋萎縮が著明な患者さんでは、筋線維が脂肪組織や結合織に置き換わりますが筋肉は一定のボリュームを保ち、血管組織は維持されていることがほとんどです。このため、筋萎縮患者さんでも、ほとんどの方では肩(三角筋)や太もも(大腿四頭筋外側)への筋肉注射は可能です。これらの部位に注射できず、他の部位に接種する場合は、筋肉を確認し血管や神経を避けるためにエコー検査などを受けられることを勧めます。
以上のように、COVID-19が完全に収束する目途が立たない現状では、ワクチン接種による副反応リスクよりも、ワクチン接種により罹患リスクを下げるメリットが大きいと考えます。ただし、アレルギーなども含めた最終的な接種の判断は患者さんご自身でしていただく必要があります。
また、ワクチンを接種しても、COVID-19に全く感染・発病しない訳ではありません。ワクチン後も感染予防策の継続をお願いします。 「新型コロナ肺炎(COVID-19)が筋ジストロフィー患者に及ぼす影響の実態調査」アンケートにワクチンの項目を追加しました。
皆様のご協力をお願いします。