どんな症状になるかを知っておき
何事も早めに備えよう
先天性筋ジストロフィーの種類
先天性筋ジストロフィーには、いろいろな疾病がある
先天性筋ジストロフィー(CMD)とは、出生時期から筋力・筋緊張が低下している筋ジストロフィーの総称です。以下のようにさまざまな疾病が含まれています。
先天性筋ジストロフィーの原因となる遺伝子やタンパクは次々と報告されていますが、いまだ分類できない先天性筋ジストロフィーもあります。
病型名 | 四肢以外の 筋力低下 | 呼吸・心筋障害 | 筋肉以外の症状 | 血清CK |
---|---|---|---|---|
福山型筋ジストロフィー | 巨舌 嚥下障害 | 呼吸不全 心不全 | 脳奇形 精神発達遅滞 けいれん 眼異常 関節拘縮(四肢) 側弯 | 高度上昇 |
Walker-Warburg症候群 | ||||
Muscle-Eye-Brain病 | ||||
その他のα-ジストログリカノパチー | ||||
インテグリンα欠損型 | 呼吸不全 | 精神発達遅滞 | 軽度上昇 | |
メロシン欠損型 | 呼吸不全 | 白質脳症 関節拘縮 側弯 | 中等度~高度上昇 | |
ウルリッヒ病 | 嚥下障害 | 呼吸不全 | 関節拘縮 (近位、脊椎) 過伸展 (遠位) | 正常~軽度上昇 |
ラミン欠損型 | 嚥下障害 | 呼吸不全 心伝導障害・不整脈 心不全 | 関節拘縮 (遠位、脊椎など) 早老症 | 軽度~中等度上昇 |
強直性脊椎症候群 (常染色体潜性(劣性)遺伝) | 嚥下障害 | 呼吸不全 心不全 | 関節拘縮 (肘、足首、脊椎など) 側弯 | 正常~軽度上昇 |
強直性脊椎症候群 (X染色体連鎖) | 呼吸不全 心不全 | 関節拘縮(脊椎など) 側弯 | 軽度上昇 | |
ダイナミン2欠損型 | 呼吸不全 | 関節拘縮 脳・網膜出血 | 軽度~中等度上昇 | |
テレソニン欠損型 | 関節拘縮(足首) 過伸展(上肢遠位) | |||
ミトコンドリア異常を伴う 先天性筋ジストロフィー | 心不全 | 精神発達遅滞 脳奇形 けいれん |
※CK:クレアチンキナーゼ
※先天性筋強直性ジストロフィーは、筋強直性ジストロフィーのページをご覧ください。
主な症状
出生時または乳児期早期から「だらりとしている」
筋肉の緊張がなく「だらりとした状態(フロッピーインファント)」になっており、運動発達遅滞や進行性の筋力低下を特徴としています。血清CK値は数百から数千単位に及ぶまで病型によりさまざまです。
病型によっては知的障害、てんかん(けいれん発作)などの中枢神経症状が現れるほか、小眼球症・網膜異常などの眼症状、心不全や呼吸不全などの合併症、嚥下障害や関節拘縮も起きやすくなります。
嚥下障害もよくあり、窒息や誤嚥性肺炎には高いリスクがあります。
福山型筋ジストロフィーでわかっていること
福山型筋ジストロフィーは、小児期発症の筋ジストロフィーの中で、日本国内ではデュシェンヌ型筋ジストロフィーに次いで多い病気です。どんな症状が起き得るかを以下にまとめます。
- 新生児、乳児期早期から顔面筋を含む全身性筋力低下、筋緊張低下が起きる
- 体重増加不良、発達遅滞で気が付かれることが多い
- 血清CK値は通常数千単位
- 下腿、大腿四頭筋、舌が偽性肥大(筋組織は萎縮しているが脂肪組織が増える)する
- 開口位、偽性肥大によるふっくらとした頬、長いまつげなど特有の顔貌になる
- 6歳くらいから筋萎縮が目立つようになる
- 関節拘縮が起きるようになる
- 発熱に伴うけいれんが2~4歳ごろに発症し、てんかんは10歳前後の発症が多い
- 10歳前後から呼吸筋力低下による呼吸不全、拡張型心筋症による心不全、嚥下障害が起きやすくなる
療養上の留意点
まずは早めに理学療法を
患者さんの発達促進をはじめ、症状に合わせて装具や車いす、拘縮予防を行うようにします。
ウイルス感染に注意しよう
先天性筋ジストロフィーの子どもは、咳をする力が弱く、嚥下機能も低下していることが多いため、風邪を引きやすくこじらせやすくなります。肺炎の繰り返しは体力の消耗・運動発達の遅れにもつながるため、感染の予防に努めましょう。
福山型先天性筋ジストロフィーでは、感染による発熱が治まった時期に、急性の脱力を生じることがあります。呼吸や嚥下にも障害をきたす場合があるので、発熱時だけでなく、解熱後もしばらく注意して観察してください。
心不全や呼吸不全が起きていないか、定期的にチェック
定期的な心エコー評価が欠かせません。
呼吸に関しては非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)を第一選択としますが、嚥下機能なども踏まえて適切な方法を選択します。誤嚥を繰り返すと窒息や誤嚥性肺炎などリスクが高くなるため、ケアをされるご家族は患者さんを注意深く観察し、主治医と都度相談が必要です。
側弯に対応するとき
継続的な評価を行い、適切な時期に矯正手術(脊椎固定術)などを行います。広範囲に及ぶ手術のため、できる時期が限られていますので、早めに主治医と相談する必要があります。