軽症でも全身の合併症を適切に管理し
突然死を防ぐ

筋強直性ジストロフィーの種類

原因となる遺伝子が違う2種類。どちらもDNAの異常な伸長が原因

筋強直性ジストロフィーとは、筋強直現象(握った手がすぐに開かないなど)という特徴的な症状を呈する筋ジストロフィーの病型です。筋力低下に加え、全身にさまざまな合併症を併発する特徴を持つ病気です。

これまでに、2つの責任遺伝子が同定されていて、19番染色体の遺伝子DMPKの非翻訳領域にある3塩基(CTG)反復配列が伸びているのが1型、3番染色体のCNBP遺伝子のイントロン1にある4塩基(CCTG)反復配列が伸びているのが2型です。
日本の患者さんはほとんどが1型です。

発症年齢に応じた分類も

筋強直性ジストロフィーは、反復配列の長さ(反復回数)と発症年齢や重症度が関連していることが知られています。妊娠中・出生時から症状を呈する先天性から成人後に発症する成人型、一生病気の存在に気づかずに過ごされる方まで、さまざまです。
一方、この病気の遺伝子は常染色体に存在し、一組の遺伝子(父親から受け継いだ遺伝子と母親から受け継いだ遺伝子)の一方が伸びていると発症します(常染色体顕性(優性)遺伝形式といいます)。患者さんが子どもを持ったとき、伸びている遺伝子を子どもに伝える確率は1/2(半分)です。
子どもに伝わるときに反復回数が増加し重い症状になることが多く、これを表現促進現象といいます。

先天性筋強直性ジストロフィーは出生時から「だらりとしている(フロッピーインファント)」くらいの筋力低下があり、塩基の繰り返し数も数千以上と非常に増加しているという特徴があります。自分の症状に気づいていない軽症の女性患者でも、先天性筋強直性ジストロフィーの子どもを妊娠することがあるため、女性の患者さんが妊娠を希望する場合は、あらかじめ十分な遺伝カウンセリングを受けて準備をしっかり整えて臨むようにしましょう。
※筋強直性ジストロフィー2型には先天性は報告されていません。

主な症状

手足や首の筋力低下、萎縮

筋強直現象は手を強く握ったときに素早く開けない(把握ミオトニー)、診察用ハンマーで筋腹(母指球など)をたたいたときに持続的な収縮が起きる(叩打ミオトニー)などで確認されます。
最初に筋力低下に気づかれる部位として、前腕、手先(つまむ力が弱い、ペットボトルのふたが開けにくい)、下腿、足(つまずきやすい、じっと立っているのが辛い)、首(寝ていて頭を持ち上げにくい)などが多いのが特徴です。

さまざまな臓器の病気が起きる

軽症で、筋肉の症状が目立たなくても白内障や耐糖能異常(糖尿病や高脂血症)などを示すことがあります。
誤嚥による肺炎、致死性不整脈などのリスクがあり、突然死による死亡も多いとされています。
全身麻酔・手術を受けると抜管困難などの術後合併症が起きる場合もあるため、病気の存在をきちんと伝え十分な準備を整えて臨むことが大切です。

主な合併症として知られているものには下記のようなものがあります。

  • 心病変:心伝導障害、不整脈、心不全
  • 中枢神経症状:認知症状、性格変化、傾眠、疲労感
  • 眼症状:白内障、網膜変性症
  • 内分泌・代謝異常:耐糖能障害、高脂血症
  • 低酸素血症、睡眠時無呼吸、呼吸不全、咳嗽力低下、無気肺
  • 嚥下障害
  • 良性・悪性腫瘍
  • 周産期異常:不妊症、早産、死産


筋強直性ジストロフィーの多臓器障害

※図版提供:筋強直性ジストロフィー患者会

特徴的な顔貌:こけた頬、前頭部の脱毛

側頭部・頬がこける(西洋斧様顔貌)、前頭部の脱毛などが起きることが多く、この病気を見慣れている人には顔を見ただけで患者さんかどうか察しが付くことがあります。

療養上の留意点

リハビリテーションと適切な装具・車いす

その時々の症状によって適切な装具を使ったり、車いすを使用したりしましょう。
転倒でけがや骨折をしてしまうと動けなくなるため、廃用によって筋力がさらに低下します。
拘縮予防のリハビリも行ってください。

突然死の予防には定期的な受診

軽症であっても合併症に対して、以下のような項目での定期的な検査が必要です。

  • 心電図・ホルター心電図、心エコー
  • 呼吸機能:肺活量、終夜SpO2モニター
  • 嚥下機能評価
  • 血液検査:耐糖能(血糖、HbA1c)、高脂血症、肝機能・腎機能など
  • 眼科:白内障、眼底検査
  • 聴力検査

不整脈にはペースメーカーや植え込み型除細動器を検討

ペースメーカーや植え込み型除細動器(ICD)の使用によって突然死減少につながったという海外の報告があります。

呼吸障害には非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)が第一選択

人工呼吸器を必要とする場合は、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)の使用が第一選択です。
ただし、呼吸機能や嚥下機能があまりにも低下しているとこの限りではありません。
患者さん自身がマスク装着に対する嫌悪感を持つこともあるため、検査入院時などの機会にNPPVの使用に慣れていきましょう。

筋強直性ジストロフィーの詳しい情報は下記をご覧ください。

DM-CTG
「専門家が提供する筋強直性ジストロフィーの臨床情報(DM-CTG)」http://dmctg.jp