困ることは動けないことだけではない
「病気のマネジメント」という考え方を持とう

内臓の問題には気が付きにくい。
だから全身の「病気のマネジメント」が必要

筋ジストロフィーは、筋肉の病気というイメージが強いため、歩けなくなる、手が不自由になるといった「動けない」ことだけに注意が向きがちですが、困ることは「動けない」ことだけではありません。

筋肉には骨格筋(手足の筋肉)、心筋(心臓の筋肉)、平滑筋(消化管の筋肉)の3種類があります。

骨格筋の筋力低下は手足を動かすなどの運動機能障害に加え、呼吸機能障害や嚥下障害、構音障害などを引き起こします。

心筋には血液のポンプとしての機能や心臓を動かす命令(信号)を伝える機能(心伝導機能)があり、障害されると心不全や不整脈を引き起こします。平滑筋が障害されると消化管の運動が低下し、便秘や腸閉塞などの問題が生じます。

病型によっては、筋肉以外の障害(中枢神経障害、眼科・耳鼻科的障害、内分泌障害など)を合併することもあります。

「動けない」ことは外からわかりやすいですが、呼吸や嚥下、心臓や消化管の問題は生命や生活に大きな影響があるにもかかわらず、障害の進行に患者さん自身も周囲も気付きにくいのが問題です。
筋ジストロフィーとうまく付き合って生活して行くには、患者さん自身に起きやすい問題を把握しておいて、定期的な検査と早めの対応策を取っていくことが大切です。


筋肉と疾患

筋萎縮・筋力低下・運動機能障害 呼吸機能障害・咳嗽力低下 咀嚼嚥下機能障害・構音障害 ポンプ機能障害・心伝導障害

また、学校や職場、介護者など周囲の人にも、こうした情報を共有・理解してもらうことが、患者さんに対する誤解やトラブルを防ぎ、社会参加を進める上でも重要です。
ご家族だけで問題を抱え込むのではなく、専門医を核として、地域の医師、訪問看護師、療法士、保健・福祉・介護関係者、教育関係者や職場の方々に積極的に相談して、患者さんを支えるチームケアを受けましょう。

患者さんにかかわる職種のみなさんは、「関連職種連携」のページも併せてご覧ください。

重要なマネジメント(1):運動機能障害

リハビリテーションは活動範囲の維持に欠かせません。早期からのリハビリは拘縮・変形予防にも重要です。詳しくは「リハビリのすすめ」をご覧ください。

重要なマネジメント(2):呼吸機能障害

適切な呼吸管理によって、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの平均寿命は大きく改善しました。他病型でも同様の効果が期待できます。詳しくはこちらをご覧ください。

重要なマネジメント(3):嚥下機能障害

食べ物をうまく飲み込めなくなると、誤嚥性肺炎や窒息のリスクが生じます。詳しくはこちらをご覧ください。

重要なマネジメント(4):心筋障害

心臓も筋肉です。心筋障害は運動機能が良い方にも出現することがあるため、早い時期からのマネジメントが必要です。詳しくはこちらをご覧ください。