「いつか」ではなく
「今から」「続ける」リハビリへ
機能低下に備えて手を打つ
患者さん自身の努力、ご家族の協力でできること
筋ジストロフィーは慢性疾患のひとつです。進行性の筋力低下と、さまざまな合併症を徐々に発病し、長期間の治療が必要です。根本治療薬の研究も進みつつあり、患者さんとご家族は希望を持つとともに、冷静に先を見て「今できることをきちんとして」将来に備えていくことが大事です。
健康の維持には「今から」「続ける」リハビリテーション
筋ジストロフィーは、リハビリによって健康や活動範囲、生活の質(QOL)を維持することができます。
とりわけ、関節の可動域や肺をきれいに保つことは重要です。
- 関節可動域訓練:拘縮や変形の予防
- 転倒・事故予防対策:けがや骨折の予防
- 装具・(電動)車いす処方:生活範囲の維持拡大
- 呼吸理学療法:肺を柔らかくきれいに保つ
- 摂食嚥下訓練:誤嚥性肺炎の予防、経口摂取(QOL)の維持
- IT訓練など:社会参加の支援
一般に、リハビリというと機能回復を目的としてものとして理解されがちですが、筋ジストロフィーでは、“リハビリ”=“筋力増強を目指した筋力トレーニング”ではありません。いわゆる筋力トレーニングは、筋肉を痛めるリスクが高いため勧めていません。
リハビリテーションは患者自身と家族の自立を目指す
リハビリには、健康維持だけでなく自立を支援することも含まれます。
リハビリによって身の回りの動作を維持するだけでなく、他者への依存を減らし、患者さんが自己管理をできるようになる「自立」につながることは、リハビリの大きな目的のひとつです。
「どの時期から、何をするか」を考える
デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、「重症度(機能障害程度)」に応じて(将来生じる障害に備えて)何をしていくべきか」という研究が進んでいます。
こうした指標があるとリハビリだけでなく、患者さんの生活に必要な環境を整えていくことも、計画性を持って取り組むことができます。
以下に「デュシェンヌ型筋ジストロフィーにおける機能障害ごとの対応」を示します。
図版のPDFはこちらからダウンロードできます。
筋ジストロフィーの各病型に必要な「機能障害ごとの対応」を進めるには
筋ジストロフィーの病型ごとに「機能障害ごとの対応」を考えるためには、患者さんの「自然歴」が必要です。
「自然歴」とは、患者さんが「発症からどんな経過をたどっているのか」を記録したものです。
多くの患者さんの「自然歴」を取りまとめていくと、「この病気は一般的に、こんな経過をたどっていく」という病気の姿がわかり、将来に起こってくる問題を見越してどのように対処していけばいいのかを検討することができます。
「自然歴」は、患者登録や指定難病のデータベースにも蓄積されています。患者登録や指定難病を「更新する」ことは、患者さんとご家族にとって必要な「予見をする力」に寄与します。
患者登録や指定難病申請を行っている方は、継続してデータを更新しましょう。