治験とは

薬や医療機器などを人に用いて有効性や安全性を明らかにする臨床研究の中には、治験と特定臨床研究があります。

治験とは、治療薬(治療法)が国の承認を受けることを目的に、人に対して安全で効果があるかどうか、患者さんが協力して行われる試験です。

製薬企業が行う治験を「企業治験」、医師が行う治験を「医師主導治験」と呼びます。

患者さんが研究に参加・協力することは、薬を世の中に出すために欠かせません。

臨床研究の中には、治験と特定臨床研究があります
詳しく知るにはこちら▼

国立保健医療科学院 臨床研究情報ポータルサイト「臨床研究について」
https://rctportal.niph.go.jp/how

厚生労働省「治験について(一般の方へ)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu.html

普段の治療と違う点

治験は病院で行いますが、普段の治療とは違う点があります。

  • 治験に参加するかどうかは、患者さんの意思で決める

治験で使用する治療薬(治療法)は、安全性と有効性が未確立のものです。このため、医師が治験を紹介しても、参加するかどうかは患者さんの意思で決めてください。
いったん同意した後でも、いつでも同意を撤回することができます。治験に参加しなくても、同意を撤回しても、普段の治療において不利な扱いを受けることはありません。

  • 治験で投与される薬は、終了後に返却

治験で投与される試験薬は、治験以外で処方してよいという国の承認を受けていません。そのため、試験薬は効果がある・なしにかかわらず、治験が終了すると返却する義務があります。

  • 治験に参加したら、決められたことは厳守する

治験で何より大切なのは、安全性・有効性に対するきちんとしたデータを集めることです。このため投与量や服薬回数、生活上の注意事項、受診日程など色々な決まり事があります。治験に参加される場合は、それらをきちんと守ってください。

  • 治験中に体調変化があった場合

すぐに治験を実施している医師に連絡してください。もし、他の医療機関を受診した場合も、できるだけ速やかに治験を実施している医師に連絡ください。

インフォームド・コンセントとは

インフォームド・コンセントとは、治験の目的、方法、試験薬の特徴(予測される効果と副作用)などが書かれた「説明文書」をよく読み、説明を受けて治験参加に同意するかどうかをご自身で決めることです。不明な点は質問し、納得してから同意をするようにしてください。

子どもの患者さんが治験を受ける場合は、理解度に合わせた「インフォームド・アセント」を行うこともあります。

なお、治験は断っても、途中でやめても、患者さんに不利益はありません。

治験はリスクとベネフィット

どんな薬でも効果がある反面、副作用がおきえます。

たとえば頭痛薬を服用すると少し胃の調子が悪い、といった経験はよくありますが、それでも多くの人は頭痛薬を使います。これは、頭痛が解消されるという「効果(ベネフィット)」が、少し胃の調子が悪くなる「副作用(リスク)」を超えているからです。

市販される薬は、「ベネフィット」が「リスク」を上回っている必要があります。

しかし、治験の試験薬は「ベネフィット」と「リスク」は明確ではありません。

そのためインフォームド・コンセントでは、予測される効果に加えて、予想されている副作用と注意事項が説明されます。また万一、重大な副作用が起きた場合は国へ報告されるほか、患者さんから補償を請求できる場合があります。

治験に参加する場合は、インフォームド・コンセントをしっかり行い、副作用についてあらかじめ理解しておきましょう。

治験を実施できる病院

治験を行う病院は、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」という規則に定められた、下記の要件を満たす病院だけが選ばれます。

  • 医療設備が充分に整っていること
  • 責任を持って治験を実施する医師、看護師、薬剤師等がそろっていること
  • 治験の内容を審査する委員会を利用できること
  • 緊急の場合には直ちに必要な治療、処置が行えること

治験に参加できる患者さんとは

治験において、できるだけすみやかに安全性と有効性を確認するには、症状や年齢などが同じような患者さんを集めて、比較することが大切です。そのため、治験には「参加基準/除外基準」が決められています。同じ病気であっても全ての患者さんが治験に参加できるわけではありません。

ただし、参加基準に該当しなくても、もし治験をしている薬が国から承認を受け、市販されれば、治験での参加基準以外の患者さんにも処方できる可能性があります。

安全性と有効性は「比較試験」で調べる

多くの治験では、患者さんを「試験薬を投与されるグループ」と、「偽薬(プラセボ)を投与されるグループ」に分けて比較を行います。この時に2つのグループの患者さんに「偏り(バイアス)」があると、正確な比較ができません。そこで、バイアスを避けるため無作為にグループ分けをする「ランダム化(無作為化)比較試験」が行われることが一般的です。ランダム化比較試験では患者さんやご家族、関係者がグループを選ぶことはできません。
さらに、臨床医、臨床スタッフ、患者さん自身が、「試験薬を投与されている/いない」を知ってしまうとバイアスの原因となりやすいため、「盲検(もうけん)化」を行うことがあります。盲検化は、治験・特定臨床研究に応じてどの程度まで行うか、研究計画時に決められています。

種類説明
非盲検/オープンラベルすべての関係者、患者さんが投与されている試験薬を知っている
単盲検患者さんのみが、投与されている試験薬を知らない
二重盲検患者さんおよび臨床医 / データ収集者は、患者さんが投与されている試験薬を知らない

「条件付き早期承認制度」での承認後も、臨床試験が必要

「条件付き早期承認制度」とは、「重篤な疾患であって有効な治療方法が乏しく患者数が少ない疾患等を対象とする医薬品については、我が国での治験実施が困難、あるいは実施可能であっても治験の実施にかなりの長期間を要する場合」に、治験の最終段階を行わずに治療薬の承認を得ることです。
この承認には、製造・販売後の有効性・安全性を再確認するデータの提出や、使用する病院・医師などに要件設定が必要です。

そして「条件付き早期承認制度」で承認された後には、臨床試験で品質・有効性・安全性を証明することが欠かせません。治験に匹敵するような検査があり、多くの患者さんの参加が必要です。

患者登録は「治療をしてほしい」と、患者さんが世界に発信すること

患者登録は、同じ病気の人が「何人いるか」「どこに住んでいるか」「どのような症状か」を客観的に集めるデータベースです。
患者登録をするには、患者さん自身が「遺伝子診断を受けている」「できる治療を受けている」ことが必要です。そのため、治療薬を販売する製薬企業にとっては、治療に主体的に取り組む患者さんの人数を把握できる、重要なデータです。
患者登録については、神経筋疾患患者登録「Remudy」をご覧ください。

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